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新聞編集の基礎知識

原稿作りから校正までノウハウ、セオリーをまとめました。ご活用ください。

見出しの基本と応用

テーマではなく記事の中心を

見出し実例1

新聞の見出しは、記事本文の添えものではなく見出しをみただけで、どういうことが書いてあるのかわからせると同時に、記事本文を「読む意欲をひきだす」役割をはたしています。

したがって、「春闘をふりかえって」「教宣部長に就任して」とか、「ヨーロッパ訪問記」「東北食べある記」などという抽象的な記事のテーマではなく、記事の内容、とくにその記事の中心となる部分を見出しにする必要があります。

そして、できるだけ簡潔な文章にするには、記事のなかの一番大切な部分だけを生かし強調し、他の部分を思いきって省略することです。見出しとは、文字どおり「見出し」であって「読みだし」ではありません。一見してその意味がわかるように、見出しの字数をできるだけ短くすることが大切です。

見出しも「主語と述語からなる文章」ですが、簡潔にするために、主語や動詞、助動詞などの述語を省略する場合があります。つまり、「見出しは文章である」というのは、読者が、それを見て文章にすることができればよいわけです。書かなくてもわかることばは省略してもよいのです。しかし、省略のしかたが悪いために意味が通じなかったり、反対の意味になってしまったりすることがありますから注意しなければなりません。

主見出し8字、袖10字が基準

見出し実例2

新聞の見出しは、【実例2】のように「柱見出し」「肩見出し」「主見出し」「袖見出し」の四本で構成します。

しかし、現在の新聞の見出しは【実例1】のように記事の中心を具体的にあらわす「主見出し」と、それを補足する「袖見出し」の二本になっているのが一般化し、現在ではこれが見出しの基本型となっています。

この「基本型」に、柱見出しや肩見出しなどをつけ加えたり、地紋見出しをつかうなど記事の内容や紙面構成によって変化させていきます。

同じ紙面に、関連するいくつかの記事を掲載する場合は、【実例2】のように全体のテーマを示す「柱見出し」をつけ、「主見出し」の内容を「肩見出し」で補足します。しかし、このような形の見出しは一つの紙面に一ヵ所にとどめるようにします。

そして「主見出し8字・袖10字」ということばがあるように、一見してその意味がつかめ、同時に、もっともバランスのよい形にすることのできる見出しの文字数は、主見出しが7~8字、袖見出しが10~11字です。

これを基準にしていろいろな変型を工夫し、見出しの文章づくりに慣れていくことです。しかし、見出しの文字数はこれでなければならない…というものではありません。あくまでも「基準」だということです。

変型見出しは基本から出発

新聞の見出しは、この「基本型」でなければならない…ということではありません。記事の内容や紙面全体のバランスと関連させながら、読者の胸の中にピシッと入りこむ見出し、記事の内容にピッタリあった見出しのことばと形を考え、工夫していくことが大切で、一つの紙面に最低でも一つは大胆に変化させた見出しも必要です。

しかし、変型ばかりではお互いの効果を相殺し紙面全体もまとまりのないものになりますから、一つの紙面に十本の見出しがあるとすれば、基本型が八本で変型は二本程度にとどめましょう。

天地・左右の空白も大切に

見出しをすっきりとみせ、紙面全体の美しさ、読みやすさ…のうえで、見出しの天地のアキは大きなウエイトを占めます。

字数が多すぎたり、文字が大きすぎて見出しの天地に空白が少なく、ギッシリとつまった感じの見出しを「ハリの強い見出し」といい、なにか息がつまりそうな感じをあたえます。また、字数が少なかったり、文字が小さすぎて見出しの天地に空白がありすぎる場合を「ハリの弱い見出し」といい、なんだか心細い感じとなります。

紙面を読みやすくするうえで、〈空白〉は大切な要素の一つです。しかし、この空白は大きすぎても小さすぎても、その効果を発揮させることはできないのです。

読みやすい紙面をつくるうえで見出しの天地のアキとともに、左右・行間のアキも大切です。これは広すぎても狭すぎても読みにくいものです。

しかし、この見出し幅の計算が正確にできないために、「見出しの幅(左右の空白をふくめて)がいったい何行分になるのか」わからず、見出し分のスペースのとりかたが広すぎたり、狭すぎたりして、大組み(新聞の形に組むこと)をしてみたら、記事がはみだしたり、不足したりすることがおこる場合もあります。

とくに、カコミなど箱組の場合はこの見出し幅を正確に計算しないと、組んでみたら、予定よりも相当、左右が大きくなってしまった…ということにもなります。一般的に、初めて編集する人は、割り付け段階で見出し幅が実際よりも狭く割り付けている場合が多いようです。

また横見出しの場合の基準は、横見出しの中の一番大きな見出し文字の半分の大きさを、それぞれ左右にあけるということです。したがって左右の幅を計算するには、一番大きな文字(主見出し)の字数に、さらに一字分を加えたものとなります。

バランスよくすっきりと…

見出し実例3〜4

「美しい見出し」とは「バランスのとれた見出し」だといえます。【実例3】は頭デッカチで、固苦しい見出しとなっています。また、文字は全部ゴシック体をつかっていますが、ゴシック体を多用すると、お互いの効果が相殺されるだけでなく、紙面全体を暗く固苦しくしてしまいます。

見出しも明朝体を主体にして、ゴシック体は部分的につかうようにしましょう。

さらに、袖見出しは漢字ばかりになっています。これは「戒名見出し」といって禁手の一つです。必ず一字以上の「かな」を入れましょう。

これを修正したのが【実例4】です。このようにすればスペースを小さくしながら、大きな文字がつかえます。

見出し実例5〜6

【実例5】も実際の紙面から引用したものですが、「新委員長…」はハリが強すぎ(天地の空白がすくなく)息苦しい感じをあたえている反面、袖見出しの「第五〇回総会…」は弱すぎて、見出し全体のバランスもくずれています。

そこで【実例6】のように修正してみました。原文の「選出」と「開かる」を省略しましたが、これだけでも「第50回大会が開かれて、佐藤氏が新しく委員長に選ばれたのだ」とわかります。まさか「新委員長に佐藤氏が選出されなかった」と思う人はいないでしょう。「見出しは主語と述語からなる文章である」といっても、読者がそれをみて文章化できればよいわけです。したがってあえて書かなくても読者が正しく判断してくれる言葉は省略していくことも大切です。

見出しこそ「強調と省略」を駆使して、バランスのよい形になるような字数にととのえていくのです。このように新聞の見出しはその〈ことば〉も大切ですが、〈形〉も大切になっています。


見出し実例7〜9

地紋見出しや描き文字を【実例7~9】のように、主見出しや袖見出しに使うと紙面に変化を与え、読者の目をひきつけることができます。

しかし、書体や地紋の種類を見出しの言葉や記事の内容、紙面全体のバランスに合わせないとチグハグな感じになります。そしてこうした形の見出しは、使いすぎないよう注意しましょう。

中見出しは形の統一を

見出し実例10

長い記事には「中見出し」を入れると読みやすくなり、紙面の単調さを防ぐことができます。

中見出しは普通一段、特殊なものでも二段が最大です。一つの記事に二本、三本と複数の中見出しを入れるときは、字数や文字の大きさ、形を統一する必要があります。

一本見出しはハリに注意を

見出し実例11

【実例11~13】のような一本見出しもよくつかわれますが、このような一本見出しは、天地のハリの強いもの(天地のアキの少ないもの)のほうが力感がでます。この天地のハリが弱いと紙面が貧弱になりますから注意しましょう。

ニュース記事にはハリの強いもの、文化的な記事にはハリのやや弱いものがむいています。ニュース記事や解説記事の見出しには【実例11~12】が適当です。なお【実例12】以上にハリを強くすると、息苦しくなりますから注意しましょう。

箱組などで見出しを中央にもってくる場合の文化的な記事には、【実例13】のようにハリの弱いものが向いています。

このように、見出しを美しくすっきりさせるには、天地のアキが大きな要素となりますから気をつけましょう。

なお、【実例12】のように字割にする場合は、文字の大きさに注意し左右にハミださないようにしましょう。


見出し実例14

【実例14】は、対談や座談会の記事につける見出しの形の例です。複数の意見を対比させる場合にも向いています。この場合、必ず左右の字数と文字の大きさ、書体を同じにしないと見苦しくなります。

【実例15】は、主見出しと袖見出しの文字の大きさを同じにしたものです。

【実例16】は、主見出しを特別に大きくしてみました。一つの紙面に一本程度にとどめると効果的です

【実例17】は、見出しに数字を使う場合の例です。一つの見出しに洋数字と和数字を混用しないよう気をつけましょう。

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